カリキュラム概要
コース担当教員挨拶
「サービスイノベーション集中コースの開講にあたって」
本コースではサービスイノベーションに関するエッセンスを1ヶ月で集中的に学んでいただきます。
戦後最大の国難ともいえる今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響より、現代における私たちの生活、社会・経済活動が如何にサービスに依存しているかが図らずも明らかになりました。 この事実からもわかるように、エネルギー、環境、交通、医療、福祉などのSocial Service Systemにおける問題解決とイノベーション、ネットワーク社会における新規サービス・ビジネスの創出、企業におけるサービスの研究開発戦略と実践、製造業におけるサービス化戦略と実践、サービス産業の生産性・質の向上、などサービスイノベーションは今後の日本の経済・社会に大きな影響を与えると思われます。
本コースの受講を基点として、サービスを科学する対象としてとらえ、その生産性と質を向上させ、イノベーションを実現する為の「サービス科学(サイエンス)」の深い理解に立脚した、次世代の社会・経済の発展を実現させる人材が育つことを期待しています。
環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程 教授 日高 一義
このような方に受講をお勧めします
サービスイノベーションを担う人材は、業種、職種、役職、年齢、など問いません。組織・個人にとって価値のある新たな Intangible Value を創出することを日々考えている方、実際に業務に取りまれている方、経営者として組織・個人に関するあらゆる質と効率の向上に寄与する活動に取り組まれている方など、高い問題意識と学習意欲、そして行動力のある方を歓迎します。サービスイノベーションのエッセンスを学ぶコースですので、入門編として学んでみたいという方にお勧めします。
【サービスイノベーション分野が対象とする具体例】
「エネルギー、環境、交通、医療、福祉などのSocial Service Systemにおける問題解決とイノベーション」「企業におけるサービスの研究開発戦略と実践」「サービスのビジネスモデル」「ビッグデータ、クラウド・コンピューティング、IoTなどICTを用いたビジネス」など
コースの目的と特徴
コースの目的
サービスイノベーションとは、サービスの提供者と利用者の共創により新たな価値を生み出す事に関するものであり、サービス産業や製造業を含むすべての企業・組織、及び個人に関するあらゆる質と効率の向上に寄与する活動が含まれます。そこでは特に、ICTなどの先進的な科学技術の利用が大きな意味を持ってきます。本コースでは、「サービスイノベーション論」「プロダクト・サービスデザイン」「サービスデザイン」「サービス工学」など、サービスイノベーションの実現に必要なエッセンスを短期間で集中的に学びます。
コースの特徴
- 東工大や企業のサービスイノベーションの研究者によるカリキュラム
- 国内でも希少なサービスイノベーション、サービスサイエンスの領域に特化したプログラム
- 一般的なセミナー形式ではなく、受講者自身も学習課題に取り組み教授陣や受講生同士で相互に議論
- 土曜開催、Zoomによるオンライン講義形式、学習支援システム提供など、社会人の受講環境に配慮したコース設計
受講生の評価
【受講アンケート】(5段階評価 2022年度修了生の回答実績)
授業の総合的な満足度はどのくらいですか 平均4.7
授業で学んだことが今後自分の業務に役立つと考えますか 平均4.6
【受講者の声】
- 抽象的に捉えられていたサービスがより具体的に理解できました。特にサービスの本質については大変興味深かったです。また働きながら学習するというスタイルについても学べたと思います。
- サービスに関する科学的アプローチの存在を理解でき、従来経験で理解していたものに対する見方が変わった。
- 現在あるサービスを検証する知見を得ることが出来たと思います。
- サービスのような無形のものでイノベーションを起こし、価値を生み出していくための気づきが得られた。
- サービスイノベーションのエッセンスの学習はもちろん、GMSSを利用して、協調学習を意識するようになりました。それに、何よりもサービスイノベーションへの興味が深くなり、続けて勉強する意欲が高まりました。
- これまで考えていたサービス工学とは、一味違った考え方が身についた。それとともに製造業にとっての重要性がいっそう感じられた。
- 基礎からはじまり、最終的に企業に展開できるような講義となるよう段階的な学習だったので、とても学びやすかったです。
- サービス分野の成り立ちや、概念、ものごとの考え方や捉え方について、すっきりしないところがあったのですが、今回の学びによってかなり見えてくるようになりました。今後、自身の仕事に大きなプラスになると思います。
- 自社サービスを科学的に分析しながら改革し、自社のサービスを表現したい想い、優れたサービスを提供するための事前期待の的を定めていきたい。サービスエクセレンスを意識した社内活動を高めていきたい。
- 過去の受講生の評価はこちら
【受講者所属先の例(2019~2022年)】
旭化成株式会社、株式会社アシックス、味の素株式会社、株式会社コーセー、株式会社セールスフォース・ジャパン、大正製薬株式会社、有限責任監査法人トーマツ、日本航空株式会社、日本電信電話株式会社、株式会社ブリヂストン、マックス株式会社、三菱重工業株式会社、株式会社明電舎、森永乳業株式会社、ヤマハ株式会社、ほか、ベンチャー企業、中小企業、等
2023年度スケジュール ※2024年開講
期間:2024年2月3日(土)~3月2日(土)
原則、zoomを用いた遠隔受講を予定しています。
月日 | 時間 | 回 | 内容 | 学習形態 | 担当 |
---|---|---|---|---|---|
2/3 (土) |
11:30~ 12:20 |
– | 受講ガイダンス① 受講案内/自己紹介/受講説明 |
ガイダンス | 古俣 |
12:30~ 14:30 |
1 | サービスイノベーション論① サービス科学概論1 サービスイノベーションのパターン /グループ課題1説明 |
講義 | 日高 | |
15:00~ 16:00 |
– | 受講ガイダンス② グループワークの進め方 |
ガイダンス | 古俣 | |
– | グループワーク、課題1発表準備 | 自習 | – | ||
2/10 (土) |
13:00~ 15:00 |
2 | サービスイノベーション論② グループ課題1発表、サービス科学概論2 |
発表 | 日高 |
15:10~ |
3 |
サービス工学① |
講義 | 原 | |
17:20~ 19:20 |
4 |
サービス工学② |
講義&演習 | 原 | |
– | グループワーク、課題2発表準備 | 自習 | – | ||
2/17 (土) |
13:00~ 15:00 |
5 | サービス工学③ グループ課題2発表 |
発表&討議 | 原 |
15:10~ 17:10 |
6 | プロダクト・サービスデザイン① Product-Service Systems/グループ課題3説明 |
講義 | 木見田 | |
– | グループワーク、課題3発表準備 | 自習 | – | ||
2/24 (土) |
13:00~ 15:00 |
7 | プロダクト・サービスデザイン② グループ課題3発表 |
発表&演習 | 木見田 |
15:10~ 17:10 |
8 | プロダクト・サービスデザイン③ 製造業のサービス化を促進する要因と障壁の分析 |
講義&討議 | 木見田 | |
3/2 (土) |
13:00~ 15:00 |
9 | サービスデザイン① サービスの事前期待のマネジメント 事前期待を中心に据えたサービス設計 |
講義 | 松井 |
15:10~ 17:10 |
10 | サービスデザイン② グループ演習 |
演習&発表 | 松井 |
講師紹介
【サービスイノベーション論】
教授 日高 一義 博士(理学)
専門分野
サービスサイエンス、オペレーションズリサーチ、最適化技術、研究開発マネジメント
経歴
日本IBM(株)東京基礎研究所研究部長、北陸先端科学技術大学院大学教授、等を歴任
学習目標
エネルギー、環境、交通、医療、福祉などのSocial Service Systemにおける問題解決とイノベーション、ネットワーク社会における新規サービス・ビジネスの創出、企業におけるサービスの研究開発戦略と実践、製造業におけるサービス化戦略と実践、サービス産業の生産性・質の向上、などサービスイノベーションは今後の日本の経済・社会に大きな影響を与えると思われます。サービスイノベーション論では、多岐にわたるサービスのイノベーションに科学的に対応し実践していくための基礎となる方法論、およびそこから導き出される知見に関して、日本、海外の研究事例をもとに論じます。
【プロダクト・サービスデザイン】
非常勤講師 木見田 康治 博士(工学)
(東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任講師)
専門分野
設計工学、サービス工学、Product-Service System
経歴
2011年首都大学東京大学院システムデザイン研究科博士課程修了.東京理科大学工学部第二部・助教、首都大学東京システムデザイン学部・助教を経て,2020年より現職.主として製造業のサービス化,Product-Service Systems,サービスデザインの研究に従事.11年日本機械学会設計工学・システム部門奨励業績表彰受賞.
学習目標
製造業のサービス化とは、製造業が競争力の源泉を、製品単体の製造・販売から、製品とサービスを組み合わせたProduct-Service Systems(PSS)の提供へと移行することを意味し、製造業の新たな成長戦略や持続可能な社会の実現手段として注目を集めている。本講義では、経営戦略論から、マーケティング、製品・サービス設計、オペレーションズマネジメント、ライフサイクルエンジニアリングなど多岐にわたるサービス化に関する研究を概観し、そのベネフィットとリスクを論じる。そして、演習を通じてProduct-Service Systemsの設計方法を学習する。
【サービスデザイン】
非常勤講師 松井 拓己
(松井サービスコンサルティング 代表、サービス学会理事)
専門分野
サービスサイエンス、サービスデザイン、サービス改革、サービス開発など
経歴
1981年、岐阜県生まれ。サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体、業界団体の支援や外部委員、アドバイザーを兼務。業種を越えたサービスの専門家としてメディア取材を受けるなど、様々な方面で活躍。代表著書「日本の優れたサービス」シリーズ。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、約170名の専門家が集うワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、現職。
学習目標
サービス・イノベーションを阻む6つの壁(顧客不在の壁、建前の壁、闇雲の壁、実行の壁、継続の壁、情熱の壁)を乗り越えるべく、サービス価値の原点となる事前期待について論理的な理解を深め、事前期待を中心に据えたサービス設計の方法を実践的な演習を通して学習する。また、日本サービス大賞の事例から、サービス変革のストーリーとポイントを理解する。
【サービス工学】
原 辰徳 博士(工学)
(東京大学大学院 工学系研究科 人工物工学研究センター 准教授)
専門分野
サービス工学、サービスデザイン、システム工学、データ政策など
経歴
2009年に東京大学大学院 工学系研究科 博士課程を修了後、同研究科助教、同大学 人工物工学研究センター講師、准教授などを経て2021年より現職。ISO/TC 312 “Excellence in Service” エキスパート、およびWG2 “Design of excellent services” プロジェクトリーダー。令和3年度 国際標準化貢献者表彰(産業技術環境局長表彰)。デザイン、ものづくり、観光情報、接客などに関するサービス工学研究に従事。デジタル庁 兼務。
学習目標
国際標準化はグローバルビジネスにおける「ルール形成」であり、デジタル化・ネットワーク化の時代において、国際標準化とその活用の必要性が高まっている。近年では、サービス分野への拡大も進み、2021年6月にISO 23592とISO/TS 24082が発行され、2021年末にはJISも発行された。これらは「サービスエクセレンス規格」と呼ばれ、卓越した顧客体験をもたらすための優れた組織とサービスづくりのための標準である。つまり、サービスビジネスを提供する企業のための、サービスマネジメントとサービスデザインに関するハイレベルの事項と推奨活動をまとめた手引きである。本テーマの学習目標は、①サービスにおける標準化戦略の役割を理解する、②サービスエクセレンス規格のねらいと概要を理解する、③受講者の組織と照らし合わせて特定の側面について深掘りし理解を深める、である。
社会人受講生の学習環境
学習形態
セミナーのような一方的な講義だけでなく、講師・受講同士によるディスカッション、グループ課題の取り組みなど学習者主体の学習形態になります。そのため、受講人数も限定して実施します。
グループ課題(テーマ別)
受講期間を通して、4名前後で構成するグループで課題に取り組んでいただきます。学習した内容や受講生同士の知識や経験を活かして、サービスイノベーションに関する課題(テーマ別)に取り組みます。グループ発表では、テーマ別に担当教員がレビューを行い、発表内容について受講生を交えた意見交換を行います。
GMSS(グループ学習支援システム)
CUMOTではICTを活用したグループ学習支援システム(GMSS:Group Memory Support System)を導入しています。インターネットを通してWeb上で意見交換が出来、時間や場所が異なってもグループ内で自由に意見の交換ができます。発言の際に「新しい意見」「融合意見」など発言者が付記でき、これによって議論が可視化され、限られた時間での議論の深化につながります。
実施体制
- 主 催
東京工業大学社会人アカデミー - 事業主体
環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程 - 修了認定
修了者には東京工業大学社会人アカデミー長名の「修了証書」を交付いたします。評価については、出席状況を含め、コースごとに行います。